日々の雑感

忍びの里、伊賀の地より。オーガニックとは? 「本物」はどこに?

エチオピアの商品取引市場を立ち上げた Eleni Gabre-Madhin

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エチオピアに商品取引市場を立ち上げるプロジェクトを進めた Eleni Gabre-Madhin さんの講演に大きな刺激をもらった。

エチオピア生まれ、米国に移住して世界銀行で経済学者としてキャリアを重ねてきた彼女が、母国の農業の置かれた境遇を改善するため、「市場」を創設すべく奔走する。

現代日本で生活していると、農産物がいつでも手に入るのは「当たり前」のことになっている。
しかし、豊作や不作、変化し続けるマーケットのニーズ、天候不順や台風や地震の影響を最小限に抑え、私たちの暮らしが守られているのは、それを可能にする「市場」や「農協」、それに接続される物流システムといったインフラがあるからこそ。

アフリカには未だそうした仕組みが未整備で、農家は天候変動や乱高下する相場に生命の存続を左右され続け、貧困のループから脱することができないまま。
一国全体の食を支えるインフラをつくる価値は限りなく大きい。

インターネットで世界の経済がひとつながりになっている現代。例えば穀物相場はシカゴでコントロールしていると言われるなか、わざわざエチオピアに市場をつくることの意味は何だろうか?

翻って見ると、日本では地方の市場がどんどん潰れている。規模感のある農家が大手スーパーや飲食チェーンと直接取引するケースが増え、各地に直売所が乱立する中、中小プレーヤー(農家、八百屋)の需給調整機能としてデザインされた地方市場はその役割を終えようとしているのか?

グローバル・大規模化とローカル・多様化の二極化が激しく進む農と食の世界で、小規模生産者や流通業者の果たすべき役割はこれまでと変わらず、むしろこれまで以上に重要になってきていると僕は思っている。
たからこそ、各地の流通ネットワークを支える地域ハブの役割を担う地方市場にも頑張ってほしいのだ。野菜や果物を目利きするプロフェッショナルの技能をしっかり継承していって欲しい。

ただ、今の日本のローカル市場は、生産や流通に関わる情報管理システムを現代的なものに更新できていない、という印象は免れない。昔ながらの体に叩き込んで覚える職人芸、人情でつなぐ関係性、紙の伝票にFAX、見た目第一(栽培履歴は二の次)、データドリブンからは程遠い、経験と勘の世界。

一度出来上がったシステムを変えるというのは、いつだって痛みを伴うプロセスになるし、良きリーダーに恵まれない限り、それが「自然に」進むことはない。
完成度の高い複雑なものであればあるほど、次のステージに移行するのは難しくなる。
でもそれをやらない限り、世界の潮流から取り残されていく可能性は非常に高い。

すでに食の流通システムが確立された先進諸国がその仕組を改善するのと違い、フルスクラッチでゼロからシステムを組み立てることの出来るアフリカには、実は大きな可能性が秘められている。
(人口構成を考えれば明らかなように、世界の中でこれから最も成長率の高いマーケットを抱えていることも間違いない。)

Eleni Gabre-Madhin さんの構想が面白いのは、取引決済システム、流通倉庫に加え、農産物情報の総合システムに栽培履歴や評価指標も含むような、新しい形の総合農業流通センターを構築しようとしたこと。

しがらみのある旧世界にくらべれば、この構想の実現を妨げるものはずっと小さいのではないかと思う。(別の要因はそりゃたくさんあるだろうけど…)

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今、僕らが市場や農協のようなシステムが十分に形成されてこなかった日本の有機農業の世界に持ち込もうとしているテクノロジー、新しい仕組。

受発注データや物流手段・運航ダイヤ情報の共有化、各農業者の生産基準や栽培履歴をAPI取得する仕組、生産者の連携をファシリテーションするためのプロジェクト管理ツール、植物生理・肥培管理など技術ノウハウに関わるFAQ作成や基礎学習教材の映像アーカイブのライブラリ生成…

こうした地道なインフラ構築の価値は、この国ではなかなか認めてもらえないことが多いのだけど、アフリカであればもっとずっと容易く実現されてしまうのかもしれないなぁ。

いよいよ、ますます、時代はアフリカ、なのかな?
ねぇ、 合田 真 さん。


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以下追記

リンク先動画は2007年のものでした。
で、その後彼女が、そして市場がどうなっていったかに興味があったので少し調べてみました。
彼女はその後、実際に市場を立ち上げた後、シンジェンタのディレクターなどを経て、BLUE MOONというベンチャーインキュベータを立ち上げています。
本人の動画や、インターネット上に転がっていた日本語記事などを併せ読むと、今の実情がだんだんと分かってきたような気がします。

 

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mamezou.jimdo.com

 


若さと成長しかない、エチオピアで発展するITの可能性を見た

https://weekly.ascii.jp/elem/000/000/414/414802/

 

 

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