日々の雑感

忍びの里、伊賀の地より。オーガニックとは? 「本物」はどこに?

京都新聞記事 「人と農をむすぶ」

f:id:Kunihiko_Murayama:20191111164316j:plain

f:id:Kunihiko_Murayama:20191111164328j:plain

f:id:Kunihiko_Murayama:20191111164338j:plain




少し前の京都新聞
【京都オーガニックアクション】
の取組を紹介していただきました。

食を支える新しい流通のかたち
「フードハブ」の取組について
紹介する3週連続特集記事。

その2回目「課題を乗り越える」のタイトルで
生産者や流通業者(八百屋)が連携し、
農産物仕入に関わる受発注や物流の機能を
共同化する取組として取り上げられました。

KOA協議会ページはこちら↓

www.facebook.com

 

せっかくなので、こちらでは業界の人を意識して
もうちょっと詳しいところまで
突っ込んでご紹介させていただきますね。

---

共同物流運行のために利用しているシステムは

【FarmO】~ファーモ~  

www.farm-o.net

という、国の有機農業推進事業の一環として制作された
有機農産物の需給データベースを土台にしています。

これまでは、言わば、商品カタログだけ存在する状態で、
登録された生産者や実需者と実際に取引するには、
具体的な内容をメールや電話で相談する必要がありました。

そこで、KOAのプロジェクトと並走しながら、
FarmOの追加機能(ベータ版)として、
以下のような新たな要素を盛り込んでいってます。

【受発注、物流の合理化】

①注文リスト作成~受発注
生産者が毎週出荷可能な野菜リストを公開し、
そのアイテムを実需者がその場で発注できる機能

②物流支援
上記で成約した取引の農産物を運ぶために
何らかの物流手段を準備する必要がありますが、
ここではKOA便という共同運行便を用いているので、
そこで何をどこからどこへ集荷配送するのか、
いわゆる「ピックアップリスト」をつくる機能

商流支援
今のところ「帳合」となる存在を立てず、
メンバー間が相互に決済をしていますが、
その多対多の事業者の間で洩れやダブりなく
納品書や請求を発行する機能

【コミュニティ形成】

取引というのは信頼関係から始まるもの。
FarmOでは、Facebookでいう「友達」のように
互いに取引相手として認め合う関係にならなければ
野菜の詳しいリストなどは見えないようになっています。

KOAのように生産者と流通業者らが
コミュニティとしてまとまっている場合、
Facebookでいう「グループ機能」を持たせて、
メンバー間で取引・物流の情報や機能を共有して、
KOA全体の流通状況などを把握・分析することができます。

→ 価格設定や取引状況を透明化することで
  全体のモノの動きを俯瞰し、皆で連携して
  最適化を目指すための下地ができます。

KOAの共同運行プロジェクトでは、
こうした趣旨を集まる機会ごとに説明し、
参画メンバーである生産者、流通業者らにも
機能開発に協力してもらっており、
開発とコミュニティ形成が同時に進んでいく
面白い事例なのではないかと思います。

---

京都新聞さんの記事は「フードハブ」に焦点を置き、
海外の事例なども紹介してくれていました。

「生産から消費」「上流から下流まで」一貫して
生産計画や流通手段、各段階での価格設定などを
定めることで無理・無駄を省いて、
効果的な流通構造を構築するというのが
フードバリューチェーンの考え方。

大手スーパーや飲食店、大規模生産者などでは
需要(マーケット)動向を分析しながら、
生産計画を立てるのは当たり前のことになっています。

一方、中小規模の生産者、流通業者、
とりわけ有機農業に取り組む人たちにとって
これを実際に行うのは簡単なことではありません。

流通の各段階の「プレーヤー」の規模が小さく、
しかも経営主体が沢山ありすぎるので、
情報を総合・共有~連携することが難しく、
結局野菜を余らせて廃棄したり、足らなくなったり、
値段設定も原価を算出すること自体が大変なので、
価格は「えいっやぁ」と適当に決めていたり、
まぁ、実際はそこら中に無理・無駄が溢れています。

持続可能な社会を目指す人たちがつくる
有機農産物が必要以上に高値になる理由として
こうした部分は決して無視できない要素なのです。

.

日本の有機農業はもともと
「産直提携(CSA)」と呼ばれる
生産者と消費者が直接つながって、
互いの顔の見える関係のなかで、
安心を育てていこう、という
連携の取組を中心に進んできました。

経済成長~グローバル化~富の偏在化に伴い、
様々な共同性が解体し続けるなか、
人と人、人と自然のつながりを大切にする
「オーガニック」の思想に基づいて、
こうした取り組みをしてきたことの
意味は一定程度評価してよいと思います。

米国や欧州でも、日本の産直提携に倣う形で
CSAシステムが広がってきた歴史もありますし。

ただ、こうした流れが結果的に、
流通に関するプロフェッショナルな目線を排除し、
農協~市場といった日本の大多数の
生産者や青果事業者が身を置く「系統」のなかでは
ごく当然と思えるような機能やルールを実装することなく、
そしてそのことに気づくことさえないまま、
力ずくで進んできてしまった観はあります。

むしろ、今、農協や市場といった、
「公」を担保してきた「系統」の体力低下が進み、
一極集中型の流通構造(プランテーション・荘園型?)や
直売所のような場所貸し型(モール型)ビジネスが
強まっていく流れのなかで、
優れた中小規模の生産者・流通業者が生き残るには、
どういう方策をとっていけばよいでしょうか?

僕はこんな時代だからこそ、旧来の農協や市場のような、
自立した事業者が互いを支え合う仕組みを改めて見直し、
これを次代にフィットさせる形で再構築していく、
そんな動きが有効ではないかと思っています。

とまぁそんなことで、このKOAの取組には
ずいぶんと大きく思い入れをしているわけです。

参考資料として(もはやクラシックですが…)
農水省資料:生産者に有利な流通構造の確立へ向けて↓
https://www.kantei.go.jp/…/m…/suishinkaigo_dai1/siryou3.pdf…

 

'

少し前にご案内したとおり、8/31には
この流れの延長上にあるムーブメントとして
兵庫県でちょっとしたイベントもやります。

www.facebook.com

 

こちらも京都に劣らず、非常に面白い動きに
育ってきているので、ご興味おありの方は
是非、当日参加ないしオンラインからの視聴参加を。

次代の農と食を語る会オンラインサロンに
参加していただけるとストリーム配信を
覗いていただくことができます。

lounge.dmm.com